【体験談】暴力を逃れたシングルマザーが、生活保護で手に入れた「盾」とは

あなたは、誰にも頼れず、一人で戦っていませんか？

夫からの暴力に何年も苦しみ、幼い子どもを連れて家を飛び出したSさん(30代)。身を隠した先に待っていたのは、貧困という新たな壁でした。

仕事も住む場所もなく、絶望の淵にいた彼女は、どうやって子どもとの安全な生活を取り戻したのでしょうか。

今回は、プライドや罪悪感に苦しみながらも、勇気ある一歩を踏み出したSさんの体験を紹介します。

ほごらんどの支援に対する感想

「普通」の暮らしが壊れたあの日

私は、夫からの暴力に何年も苦しんでいました。最初は軽い口論や物を投げる程度でしたが、徐々に殴る蹴るなどの暴力にエスカレートし、日常の一部になってしまいました。

生後6か月の子どもを抱えた状態で、週に2～3回は暴力を受ける生活が続きました。夜、泣き叫ぶ子どもの横で、夫が怒鳴り声をあげるたび、「この子だけは守らなければ」と強く思いました。

ある日、子どもにまで手を出そうとした瞬間、私は決意しました。夜中、子どもを抱き、リュック一つに着替えとオムツをできるだけ詰め込み、現金5,000円だけを握りしめて家を飛び出しました。息が詰まるような冷たい空気の中、「もう二度と戻らない」と心に誓いました。

身を隠した先の、貧困という現実

幸い、知人の家に子どもと一緒に匿ってもらうことができました。しかし、友人も経済的に余裕がなかったため、生活費の援助までは期待できず、生活は文字通りゼロからのスタートでした。

貯金はほとんどなく、手元にある現金はわずか5,000円ほど。頼れる家族もおらず、携帯電話のデータもギリギリしか残っていません。子どもを保育園に預けたくても、仕事がないため収入証明が出せませんでした。

仕事を探そうにも、昼間は子どもの世話で手一杯。夜は疲れ果てて眠るしかなく、面接どころではありませんでした。暴力から解放された安心感も束の間、目の前に立ちはだかるのは「お金がない」という現実です。家賃も払えず、食費は一日500円以内でやりくり。スーパーの特売日を逃すと、食事を抜く日もありました。

「子どもを飢えさせてしまうかもしれない」「このままでは、またあの人に居場所を知られてしまうかもしれない」貧困と孤独が、私の心を少しずつ蝕んでいきました。日中は不安で動悸が止まらず、夜は寝ても悪夢で何度も目を覚ましました。

生活保護は「甘え」？ 罪悪感との闘い

生活保護のことは頭にありました。でも、どうしても踏み出せなかったんです。「税金で生きるなんて、弱い自分の甘えだ」「母親なのに、他人に頼るの？」そう考えるだけで、心が締めつけられました。

夜中、スマホを握りしめてSNSで生活保護と検索すると、「働けないなんて言い訳」、「税金で楽しようとしてるだけ」その一言ひとことが、刃物みたいに胸に突き刺さってきました。

画面を閉じても頭の中で繰り返し、気づけば「やっぱり私が甘いんだ」と自分を責めていました。

でも同時に、隣で眠る子どもの寝顔を見ると、「この子を飢えさせるわけにはいかない」「私のくだらない意地で、この子まで巻き込んでいいのか」という気持ちも湧いてきました。

逃げてきたはずなのに、暴力の代わりに今度は社会の目と貧困に追い詰められていました。「せっかく暴力から逃げられたのに、今度は貧困に負けるのか」──その悔しさと罪悪感が、私をさらに追い込んでいきました。

絶望の中で見つけた、生活保護という「盾」

そんな絶望の淵にいたとき、私はほごらんどを知りました。生活保護について「匿名で相談できる」という言葉に、最後の望みを託して連絡してみました。

担当の方は、私の話にただ耳を傾けてくれました。 DVで逃げてきたこと、経済的に追い詰められていること、そして何より、「恥ずかしい」という気持ち。誰にも言えなかったつらい胸の内を話すと、相談員さんは静かにこう言ってくれました。

「Sさんが頑張ってこられたことは、決して無駄ではありません。生活保護は、Sさんがお子さんと安心して暮らすための、大切な盾になる制度です」

その言葉に、私は救われました。 「盾」という言葉が、私の心に響きました。生活保護は「甘え」ではなく、「この子を守るための武器」なんだと。

ミルクもオムツも、そして住む場所も…ほごらんどの支援

生活保護の申請が決まるまでの間、いちばん不安だったのは「この子のミルクとオムツ、そして寝る場所」でした。お金も底をつき、買い足す余裕もなく、知人宅にも長くはいられませんでした。

そんな時、ほごらんどの方が粉ミルクやオムツを支援してくれ、さらに親子で安心して暮らせるアパートも用意してくれたんです。

あの日、泣きじゃくる子にミルクを飲ませながら、手にしたアパートの鍵を握った瞬間、胸がいっぱいになり、ようやく心から「この子と一緒に生きていける」と実感できました。

乳児と共に乗り越えた、生活保護での新しい生活

生活保護の受給が決まったことで、私たちの生活は少しずつ安定し始めました。

母子世帯の場合、生活扶助と住宅扶助、母子加算を合わせて月額約22万円ほど支給され、家賃は住宅扶助で6万円ほど。光熱費や医療費もほぼ心配なく、スーパーでの買い物も以前より安心してできるようになりました。

その上で、生活保護を受給しながらでも、生後6か月の子どもを 認可保育園に預けることができ、保育料の自己負担はゼロ でした。昼間は保育園に子どもを預け、私は就労支援プログラムに参加できるようになりました。

ミルクやオムツ、離乳食も生活扶助で賄えるため、赤ちゃんの健康と生活の両立が可能になりました。

家賃や光熱費の不安が消え、夜中に泣いていた子どものお腹の音に怯えることもなくなりました。夜泣きにも以前より冷静に対応でき、私自身も眠れる時間が増えました。何より、心に少しずつ、大きな余裕が生まれました。

ある夜、寝かしつけた子どもが安心したように手足をゆったり動かし、顔に小さな笑みを浮かべました。その様子を見て胸の中で小さく安堵し、私は思わず涙が止まらなくなりました。

私は、この子を守るために暴力から逃げ、夜も眠れぬ日々を耐え、貧困の壁に立ち向かってきました。ようやく手にした生活保護という「盾」が、私たちを守ってくれる──その実感が、体の奥までじんわりと染みわたったのです。

同じ悩みを抱えているあなたへ

もし、今これを読んでくださっているあなたが、暴力や生活の不安に苦しみ、一人で耐えているなら、伝えたいことがあります。

私は、何年も暴力を耐え、逃げた後も、貧困という見えない鎖に縛られていました。そして何より、「私が弱いからだ」「生活保護なんて甘えだ」と、自分を責め続けていたのです。

でも、それは間違いでした。暴力から逃げる勇気も、まだ踏み出せず迷っている気持ちも、決して弱さではありません。それは、あなた自身と、子どもを守ろうとする本能であり、尊い決断の一部です。そして、その先に立ちはだかる貧困は、あなたのせいではありません。

「生活保護」は、あなたが弱いから利用する制度ではありません。暴力から、そして貧困から、あなたと子どもを守るための「盾」です。

もし今、「子どもを守りたいけど、もうどうしていいかわからない」と感じているなら、どうか一人で抱え込まないでください。立ち止まることも、考え直すことも、勇気の一歩です。この「盾」を手に取ることで、あなたの未来は少しずつでも変わり始めます。

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